元気あげます!巴里編
ひかるは警察の事情聴取を受けたあと、隅田に琴美の屋敷の門の前まで送ってもらって帰宅しました。
門の中に入るなり、千裕が走ってくるのが見えました。
「千裕様、どうしたんですか?
お迎えなんてめずらしいかも・・・」
「出版社の隅田さんから電話もらったんだ。
ひかるが暴漢に襲われたけど助けたから心配はいりませんって。
事情聴取が終わったら送るから、門まで迎えに来てやってくれって・・・」
「すごく気がきく人なんだ・・・。
隅田さんが私を取材しようと追っかけてくれてなかったら、私どうなってたか・・・」
「そうだね。少し前はずっと俺の絵のことや生い立ちなんかを聞きに来てたけど、いつのまにかひかるの取材になってたんだな。
それがよかったのかもしれないけど・・・。
何を聞きたくて追いかけられてるんだ?」
「それが・・・どうして千裕様が私と婚約しようと思ったかですって。
どういう取引、契約、打ち合わせ?になってたか知りたいって・・・。
メイドの私と結婚したいとは思わないのが普通でしょって、話きいてるとむかついてくるんだもん・・・。」
「しょうがないな。
じゃ、その取材俺が受けてやるよ。
俺が断ったせいで、ひかるが追いかけまわされるのは困るし、早く帰宅してほしいからね。」
「でも、それじゃ千裕様が・・・記憶だってまだもどってないのに!」
「大丈夫だよ。
ひかるとのことはすべて思い出したから。
ただ、雑誌に載った後のことは想像つかないからなぁ。」
「私のようにあなたもシンデレラになれるって言いたいらしいわ。
三崎にはまだ独身の息子がいるんだからって・・・言ってた。」
「へぇ。そういうことか。
それは面白いかもしれないな。」
「面白いって・・・」
「いいんじゃないか・・・弟の嫁さん候補をオーディションするみたいでさ。
見合いの席を用意するより、楽だろうしな。
俺たちがだしみたいな使われ方するのが、わかってれば取材も気楽に受けられるってもんだしな。
ひかるの写真をベタベタ載せられて、それを男どもにイヤラシイ目で見られる方が問題だ。」