元気あげます!巴里編
ひかるはその日の夜の帰り道、ヴァレリーの言葉の意味を考えていました。

((チーフと千裕様は同じ師匠にお菓子作りを習っていた。
チーフは千裕様の作る料理にすごく興味があるみたい。
直接、連絡して作ってもらえばいいのに、私に頼むのはなぜ?
千裕様はどうして工房に変装してやってきたのかな?
なのにどうして、私はヴァレリーさんに習うことになったのかしら?))


いろいろと疑問が頭に浮かんできて、琴美の屋敷の門の前でしばらく立って空をながめていました。


「星は門の前で見るより、屋上へ行って見た方がきれいだと思いますよ。」


その声にびっくりして、声の方を見ると裕文が笑いながら立っていました。


「えっ・・・裕文様。どうして今頃ここに・・・?」


「ご挨拶だなぁ。仕事でこっちに来たので、ひかるがどうしているかわざわざ会いに来たというのに・・・。」


「あ、そうだったんですか。すみません・・・。」



裕文は琴美の屋敷のゲストルームに荷物を置いて、着替えてからひかるの家へと向かいました。


「屋敷内の家とはきいていたけど、落ち着けるし、いい感じだね。」


「ええ。仕事と学校を終わらせてもどると、帰りが遅くなることも多くて、お屋敷の母屋の方だと使用人さんたちに気を遣わせちゃうしね。

こっちの方が気楽でいいです。
でも・・・実際はこっちへ来てから千裕様を執事代わりにこきつかってるみたいで。」



「いいんじゃないの。本人が嫌がってるわけじゃないんだろ?」


「でも、お掃除も食事の用意もときどき洗濯まで・・・。もしかしたら、千裕様の方が忙しいかもしれないのに。」


「あのさ・・・へこんでるとこに申し訳ないけど、その千裕から連絡。
仕事でこっちにもどるのが遅れるって。
学校法人の経理でトラブルがあって、兄貴に手伝ってもらいながらチェックしてたらしいけど、それから福祉法人に自治体から入るはずの助成金が入らないとかでね・・・ちょっと大変でね。

それで、僕がここに寄るって予定言ったら、長めに滞在するように千裕に頼まれたんだけど・・・。ひかるは困る?」



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