元気あげます！巴里編

「ひどいのはひかるの方でしょ。やっと帰って来たと思ったら、男と帰ってくるわ、知らない女を妊娠させたって怒ってるわ、こんなの作らせてくれるわ、いったい何がどうなってるんだ？」


立場が形勢逆転してしまったことで、ひかるは自分なりにものすごく気に病んでいたことがなさけないやら、ばかばかしいやらで涙が出てきました。


「どうした？俺がいない間に何があったのか順番にわかるように言ってみ。」


ひかるは裕文がやってきたことから順に話して、千裕の電話の向こうの女性の言葉がずっと気になっていたこと。
会社とその取引先の女性とのことを琴美が解決してくれたと思った矢先に今度は、いきなり千裕の子を妊娠したという女性が現れて・・・千裕と連絡がとれないので、心を痛めながら仕事をしていたから、工房の人たちが心配してくれたこと。
そして、足を怪我してしまったこと・・・。


自分だけがふりまわされて疲れてしまい、そこに千裕のムースを食べたら泣けてきたと言いました。


「そっかぁ・・・。電話に出なかったのがいちばんマズかったね。ごめん。
でも、妊娠した女性の友達って人はひかるの電話にかけてきたんだよね。
ってことは、俺の電話は電池切れだったんだから、誰かの電話帳から知ったということになるよな。

ひかるの電話番号を知ってる男？・・・・・どのくらい教えた？
千裕様と裕文様、裕樹様、淳裕様と・・・ヴァレリーさんと、専門学校かな。」


「工房の人は？」


「携帯は教えてないの。近いから家と職場の電話がわかればいいわけだし。
怪我をしてセルジュさんに今日が初めて送ってもらったくらいだもの。」



「ってことは・・・俺の名前を語ってるわけだし・・・裕文か、淳裕あたりが怪しいな。
場合によっては、家の一大事かもしれないしな。
しっかし・・・俺の名前を語って、ひかるを巻き込むようなことして、許せんな。

もし、電話をかけてきた女性か妊娠したって女性から電話があったら、俺に代わってくれよ。
そうだな・・・俺がいないときだったら、『あなたがいう千裕さんはどういう特徴がありますか』って聞いてくれたらいい。
今だったら、俺だけが髪の毛が長いしさ・・・。」