元気あげます!巴里編
翌日、ひかるは千裕より早く起きて、千裕の朝食をテーブルに並べて、冷蔵庫にあったムースの残りを持って千裕を起こさずに出かけていきました。
((慌てて帰ってきてくれたのに、いろんなことがあって疲れさせちゃったもんね。
今日はお休みって言ってたから、休ませてあげよ~っと。))
ひかるが工房に着くと、またみんなが驚いた顔をしていました。
「おはようございまぁ~っす!」
ひかるはすぐに持参したムースを冷蔵庫にいれました。
すると、セルジュがムースのことをたずねました。
「あ、これはチーフに頼まれていたものなんです。」
「これって俺のムースだろ。ひかるが作ったのか?」
「いえ、作ったのは昨日のお話した人物です。」
「三崎千裕が作ったのか?一口食べてみてもいいか?」
「あの、セルジュさんにはこっちのを食べてみてほしいって・・・千裕様が。」
「これは・・・香りがいいな。
ミルクで混ぜてますと感じさせない。さっぱりしてるな。」
「ええ。女の人ってアイスクリームと違ってあまりに牛乳っぽい味ばかりだと嫌になるんじゃないかって。」
「なるほど・・・。ここまでやられると、悔しいが・・・言ってることはわかる。
俺は女性好みってのがほんとに苦手だから・・・。とても勉強になった。
どうやら、いろんな話はデマだったみたいだな。
今日のひかるはとてもうれしそうだ。」
「えっ、そうですか・・・うふふ。
結局、電話のこととかあちらの人の誤解だったんです。
いろいろご心配かけてしまってすみませんでした。」
「気にするな。悩み相談くらいならいつでものってやるから。
それにしても・・・会ってみたくなったな。三崎千裕に。
同じものを作った職人としては、会ったことないけど、千裕は人として悪いヤツじゃないってわかるよ。
うしろめたいものを持ってれば、繊細な菓子は作れないし、こんなアレンジなんてできないな。」
ひかるはじつはセルジュさんは千裕に会ったことがあるんですよと言いたかったのですが、千裕が金髪のヒイロだとばれても困るので、笑ってごまかしました。