元気あげます!巴里編
それからヴァレリーがきて、千裕の作ったムースをニヤニヤしながら味見をするのでした。
「材料足らずでこの出来ばえとは・・・さすがだな。
家の都合とはいえ、これだけのものが作れるというのにもったいない。
じつにもったいないな。
ひかる、ふだん千裕は家の仕事で忙しいですか?」
「え・・・忙しいときもあるし、そうでないっぽい気もするし・・・。」
「そうでないっぽいとは・・・?」
ひかるは昨年まで千裕の生徒だったことや、家で補習してくれたことなどをヴァレリーとセルジュに話しました。
「千裕の教え子なのか・・・」
「それがどうかしたんですか?」
「いや、ちょっと驚いただけでべつにそれはいいんだけどね・・・じつは2か月後に財界のお偉方が集まるパーティーがあるんだが、実力のあるシェフの数が足りないんだ。
ちょうどその頃に、コンクールや他にもその手のパーティーが多くてね。
外国に出ていってしまっていれば応援も頼めない状況だよ。
工房を1日休みにして、ティエリとセルジュに来てもらうとしても、1連の流れすべてを任せられる人物がいないので正直なところ、困っているんだ。」
「あの、その2か月後のパーティーって貿易とか金融関係の人が多いとかいう・・・」
「ああ、そうだが。」
「そのパーティーなら千裕様が招待状受け取ってます。
めんどくさいから欠席にしちゃおうかって・・・。」
「めんどくさいーーー!?だったら・・・裏方で出席願えないか、ひかるから頼んでくれませんか?」
「えっ・・・でも、私が頼んでもスケジュール的に無理かもしれませんよ。
その場合は・・・」
「それは仕方ないということでかまいません。しかし、何とかあなたから頼んでみてください。
お礼といってはなんですが、ひかるが会場で楽しめるようにドレスをプレゼントしますから。」
「チーフ・・・そんなことまでしてくれなくても・・・」
「いえ、いいんですよ。あなた方の楽しい休日をつぶしてしまうわけでもありますからね。」