元気あげます!巴里編
ひかるが目を覚ますと、ややカビ臭いアパートの一室で手と足をロープでくくられて床に転がされていました。

しかし、明かりは家庭の蛍光灯で、いつも人が住んでいる生活臭がありました。


普通の家?

そう思ったときでした。

部屋に日本人の女性が入ってきていいました。

「あなたが千裕の婚約者のひかるさん。けっこう若いのね。」

「その声、あなた・・・」

「ええ、中山美奈子よ。あなたがいい人ぶって家族に言いまわるから、儲けそこなったわ。
でも、おかげであなたを手に入れれば千裕が何でも言うことをきいてくれそうなのもわかったけどね。」



「どういうこと?結衣さんはやっぱり淳裕さんの子どもを妊娠したのではないのね。」


「まぁそこまでわかってしまってるのね。
もう、私たちが生きるにはあなたを使うしかないってことなのね。
お金持ちはほんとに何でも調べてからだから気に食わないわ。」


「お金が目当てでこんなことを・・・?」


「そうよ。ま、伊波はもともと自分の家の会社を三崎につぶされたから恨みからでしょうけどね。」



「つぶされた?自由競争に負けたんじゃなくて?」


「あ~あ、強者はいつもそういう都合のいい言葉を言うのよね。
負けを認めて勝った会社になんとか就職できたまではよかったわ。

でも、上の人間の出来が悪いと部下はこきつかわれるだけこきつかわれて、捨てられたり、左遷を余儀なくされる。


そんなことにもう、うんざりした伊波がその気になれば、簡単に会社のお金は着服できてしまったのには大笑いよ。
三崎という名前は大きくなったけれど、三崎のおぼっちゃんはちょろい存在だったのね。



いい具合に伊波がポカやって結衣を妊娠させちゃったから、私が楽しい筋書きを書いてあげたわ。
ほんとは結衣を三崎のおバカなぼっちゃんのいずれかの嫁にしてずっと吸い上げてやろうと思ってたのに。」


「そんなことできるわけないわ。たまたま会社のシステムに問題があっただけで、三崎の息子さんたちはバカじゃないもの。」


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