元気あげます!巴里編

その日は懐かしい屋敷の中でごちそうを囲みながら、夜遅くまで話をしたひかるでした。


翌朝、千裕の姿が見えないので、ひかるは地下通路を使ってこっそり高校の中をのぞいてみました。

千裕が先生や生徒たちにお土産を渡しているのが見えました。


生徒会の役員だと思われる女子高生2人がプレゼントに喜んで、千裕に抱きついていました。


「あ・・・・・。」



ひかるは高校生だった頃が懐かしい反面、もうあの場に関われないさびしさを感じながら地下通路をもどっていました。

そして、お土産を持って父と兄が住んでいるマンションを訪ねました。


「よぉ、元気だったか。
しばらく見ないうちに、きれいになったよな。」


「お兄ちゃんがお世辞言うようになったの?」


「お世辞じゃないよ。ほんとに俺の妹かと思うくらいきれいになったって言ってるんだ。」


「ありがと。お父さんは?」


「まだ仕事だよ。最近、板金工の若手を育てるのに忙しいらしくてさ、遅い日もあるくらい。
けどさ・・・工場がつぶれてふさいでた頃と違って、生きてるはりあいがあるっていうか、親父も元気になったぜ。」


「そうなんだ。」


「それもこれも、おまえのおかげだな。
三崎グループで仕事を世話してもらえるだけでも御の字なのにさ、妹が嫁げば親戚になっちゃうんだからなぁ。
信じられないことだよ。」


「そうだよね。信じられないよ・・・私も。」


「どうしたぁ? さては千裕様と喧嘩でもしたか?」


「ううん。してないよ。明日、別荘に連れて行ってくれるらしいし・・・。」


「そっかぁ、勉強だ、修行だってがんばってるんだから、休みは楽しんで来いよ。」


「うん、そうする・・・。じゃ、またね。」


((帰って来たというのに、どうして私は私でないみたいなんだろう・・・))
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