元気あげます!巴里編
千裕と近所を歩いて、きれいな川のほとりで、ひかるは川の水を手ですくいました。
「冷たい・・・。」
「はぅ・・・。」
「千裕様、どうしたんですか?」
「え、ここならゆったりできると思って来たのに、知り合いがいるというのは落ち着かないと思ってな。
パリの自宅はばあさんがのぞいてそうな気がするし、屋敷は過去の思い出が・・・。
だからさ・・・。」
「それでパリでは保護者に徹していたんですか?」
「保護者に徹する?なんだ・・・?俺が保護者?」
「だって・・・私は保護されてるから、住まいも学校も仕事も用意してもらったところで受け入れられているんでしょ?
本来なら、自分で必死にバイトしながら、飲まず食わずも覚悟して弟子入りするもんだって・・・。」
「おぃおぃ・・・本職のパティシエになって生きていくつもりなのか?」
「だって、私は自分がやりたいことを千裕様に告げただけしかしてないんだもの。
なのに、上司だってほかのお弟子さんより私は親切にしてもらえたし、明らかにコネありありなんだもん。」
「不満だったのか?」
「不満なんてないですけど・・・。不満なんていえないし、不満いえないくらいいい待遇だから、やめることなんて許されないんだろうなって・・・。
かなりプレッシャーを感じてみたり。」
「そっか。ひかるはいいコだな。
もっともっと、したたかな女になったっていいのに。
とことん三崎を利用してやるぅ!って。」
「私、そんな利用するなんてできないです。
修行したい人は他にもたくさんいるのに・・・。
でも、入ってしまった以上は、がんばって早く卒業しなくちゃって思ってます。」
「そっか。がんばって卒業しなきゃな・・・。
さてっと・・・もうすぐ飯の時間だし、もどろう。
社員の連中とバーベキューらしいけどな、おまえは俺の妹ってことにする?
婚約者と紹介してもいいけど、さっきみたいに岡村相手にでもあの反応だったからな、いろいろ根掘り葉掘りは聞かれるだろうな。」
「じゃ、妹でいいです。」