元気あげます!巴里編
千裕はひかるを突き飛ばし、自分も車の直撃は避けたものの、車の左端に少しかすったため、民家の石の塀に頭をぶつけて倒れました。


暴走したワンボックスカーはその後、交差点でトレーラーに当たって、歩道に乗り上げ、外灯に激突し、大破しました。


「いたたた・・・。千裕様、だいじょう・・・ぶ・・・?千裕様?
やだ、千裕様っ、しっかりして。目をあけてください!」


ひかるは何とか気持ちを押さえながら、高田に電話を入れました。

近所での大惨事に、警察と消防、救急車が集まってきました。


ひかると千裕は高田に付き添われ、救急車で病院へ搬送されていきました。



検査の結果、ひかるは見える部分の打撲のみでしたが、千裕は頭の外傷以外はとりあえず、異常は見受けられないものの、強く打っているので、記憶などに障害があるかもしれないということでした。


警察官がひかるに事情聴取をして、終わってからひかるが千裕の病室へ行ってみると、千裕は座った状態で、不安そうな表情をしたままひかるを見つめていました。


「ひかるさん?・・・僕は、僕の名前は三崎千裕で合っていますか?」


「えっ・・・千裕様・・・。」



「こちらの高田さんとおっしゃる方がそう説明してくれたんですけど、ああそうですかって聞けなくて・・・。
あなたを僕は守ろうとして怪我をしたって刑事さんが言っていたし、あなたを信じようかと思っていたところです。」



「う・そ・・・。元気そうでよかったと思ったのに・・・。」


「ひかる、千裕様はしばらく様子を見て、出血などの異常が見つからない場合は、一時的な記憶障害だろうと医師の診断がありました。

とにかく、無理をさせず、しばらく普通に自宅療養させるしかありませんな。」



「あの・・・僕は千裕でいいんですね。」



「ええ、合ってますよ。
焦らず、少しずつ思いだしていきましょうね。」



「ご迷惑かけてすみません。あの・・・僕は複数の会社の社長をしているというのは本当なんですか?
ひかるさんは、僕の何にあたる人ですか?」



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