元気あげます!巴里編


「あ、千裕様は三崎グループという財閥系企業の数社を経営しておられる社長なんですよ。
いきなりでびっくりしますよね。
会社の方は、記憶がもどるまで病欠にしておきましょう。
高田さん・・・。」



「はい、そのへんはもう手をうっておきましたから大丈夫です。」


「私は、千裕様の婚約者です。
これが指輪・・・。」


「婚約者なのに、どうして僕の名前に様をつけるんですか?」



「それは、もともと私は千裕様のおうちのメイドだったクセがぬけなくて・・・。」



「僕は主人でひかるさんがメイド?
僕はあなたにいけないことをしたとか?・・・?」


「そのへんは少しずつ、説明しますから、慌てないでください。」



ひかるはそう言って、千裕の両手をつかみました。
すると千裕は逆にひかるの右手を握って、いいました。



「手の感触だけ、おぼえているような気がします。
すみませんが、しばらく握っていてもいいですか?
この方が落ち着くので・・・。」



「いいですよ。今夜はずっと側についていますから、安心して眠ってください。
朝になったら追い出されて自宅療養と通院ですって。」



「そうですか・・・。ご迷惑かけてすみません。
ありがとう、ひかるさん。」



「ひかるさんはやめてください。ひかるっていつも呼んでた人にさんをつけられたら気持ち悪いです。」



「じゃ、僕も千裕様ではなくて、千裕と呼んでくれますか?
あなたがいくら元メイドであったとしても、世話してもらう人に様をつけてもらうのは、つらいのです。」



「でも・・・。((千裕様って呼ぶのを気に入ってたのになぁ。))
わかりました。つらいと言われるなら私も千裕って呼びます。」



「よかった・・・。」


千裕はひかるの左手をつかんだまま、目を閉じました。
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