元気あげます!巴里編
「まぁ、聞いてくるくらいなら、やってみますけどぉ・・・」
「頼む。うまくいったら礼はするから。」
ひかるは少し重いな。と思いながらも、あの無骨で女性にものを頼むなんてありえない性格のセルジュが自分に頼みごとをするくらい、追い詰められてるんだと思うと、できることでなんとかならないかと帰宅早々、琴美に連絡をとりました。
琴美は好きな菓子や、服のデザインなどが記してあるスケッチブックのコピーをとっていいと許可をくれました。
ひかるは自分が好きだと思うものを何枚かまとめて、自宅でながめました。
「へぇ・・・女性好みの菓子ねぇ。」
千裕がデザイン画を見ながら、つぶやきました。
「私、この3枚の絵がいいなって思うんだけどね・・・それをムースとかババロアにするっていうと想像できないの。
絵が大きすぎて、小さなお菓子にどう反映させたらいいのやら・・・。
これじゃ、『おまえには荷が重すぎたな』な~~~んて言われそうだわぁ・・・。」
すると、千裕が色鉛筆を片手に、絵を描き始めました。
「全体を描く必要はないんじゃないか。キャンパスが小さいなら、こんな感じでさ。」
千裕はひかるが選んだ、花畑の間を蝶がすりぬける絵の中から、蝶と一輪の花だけに注目した絵を丸いコップをさかさにした円の中に描きました。
「あいているところはあえて、描くというよりは色をのせるだけにして、食べる人の想像でいいんじゃないか?」
ひかるは目を大きく見開いて、笑顔満開になりました。
「すごくいいっ!千裕様すごいです。・・・こんな感じだったら、私もできそう。
別の風船の絵だったら、緑のある木と風船は3つまででいいですよね。」
「そうだな。季節感も出そうでいいんじゃないか。」
「あぁ~楽しいっ。それにしても、千裕様は理数系の人なのに、芸術的センスもすごいって今知りました。」
「あ・・・なんで理数系の人って決めつけてたわけ?
俺いちおう、子どもの頃から絵も描いたりしてたんだけどな。」
「えっ、そうなんですか。・・・・・」
「どうした?」