元気あげます!巴里編
千裕の記憶が完全にもどらないまま、千裕が描いた花や野菜の絵を採用した食器やカードがクチコミで売れていきました。
絵の中でもファンの間でとくに人気がある女の子の絵はいろんな噂が飛び交っていました。
花や野菜、ときには街並みなどの絵の片隅や建物の中のどこかに小さな女の子がさりげなく描かれていたのです。
そんなある日のこと・・・ひかるの家に出版社から電話がありました。
千裕への取材の申し込みだったのですが、千裕自身が記憶喪失を理由に断ってしまいました。
いつものように、ひかるが夜に学校から帰ると、若い男が家の中の様子をのぞいているようでした。
「な、何をやっているんですか!どろぼ・・・・・。」
ひかるがそう言いかけると、男はひかるの口を手でふさいでひかるを押さえつけました。
「うっ・・・きゃっ・・・」
「違うんだ。叫ばないで!僕は取材させてもらおうと・・・」
「へ?」
「すいません!ごめんなさい。決して怪しい者じゃないんです。
何度か電話でアポいれさせてもらってた出版社の者です。
上司に情報をつかんでくるまで帰って来るなって言われてここに来たんです。」
「ワタル・スミダ。・・・隅田渉さん。日本人ですか?」
「はい。三崎千裕さんってマダム・コトミのお孫さんだとお聞きしましたので、僕が担当することになりまして・・・。
あ、ああっーーーーーーー!! あなたは。 あなたでしたか。」
「な、なんですか・・・。いきなり。」
「千裕さんの絵の中によく登場する女の子のモデルは、あなたですね。」
「えっ・・・私は何もきいていません。
ここではぜんぜん描いてくれませんし、私からは何とも言えないんです。」
「写真だけ撮らせていただきたいんですが。」
「どうしてですか?困ります。モデルが私だと決まったわけじゃないのに・・・」
「女の子の絵、見たことないんですか?
これなんですけど、ほら、あなたそっくりだ。」