元気あげます!巴里編
イラストカードに描かれた少女を見て、ひかるは顔を赤らめました。
このところ多忙で千裕の身の回りのことをすることはあっても、千裕の作品に目を通す時間などとれなかったのでした。
「私の顔・・・。ですね。」
「でも、あなたが知らなかったとなると・・・無断で描いて販売してたわけだから、問題だなぁ。
で、あなたのお名前をきいていませんでしたね。」
「水口ひかるです。」
「三崎さんのご親戚やご兄弟じゃないんですか?」
「ええ。まだ・・・」
「まだってことは、あなたは千裕さんの・・・。」
「あの、取材だったらやめてください。
うかつに私がしゃべったなんてわかったら、私・・・叱られるし、困ります。
お願いですから、もう来ないでください。」
「そうはいかないんです。
僕も、何か持ち帰らないと、会社をクビになってしまうんで。
あ・・・あの。
((弱ったな、彼女をいじめてるみたいじゃないか。
しかしなぁ・・・この家に千裕氏が住んでいるなら2人は同棲中ということになるし、ある意味スクープ映像かもしれないんだしなぁ。))
「これ食べたらとにかく帰ってください。
本人が取材は受けないって返事している以上、そういうことですので。」
「これは・・・ムースに絵が・・・。
絵は千裕さんの絵ですよね。
このムースは・・・?」
「これは私が作ったものです。まだまだ修行中で、未熟なんですけどね。」
「修行中?はっ・・・じゃあ、明日からあなたを取材させてください。」
「だから、私は千裕様のことを話すことはありませんって言ってるのに。」
「もちろんです。あなたを取材して、あなたのことがわかれば、こちらも突破口が開けるかもしれないし・・・。
絵のモデルだと思われる女性はこんな人ってね。」
「困ります・・・ほんとに。もう・・・」
「じゃ、明日よろしく。」