陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
暫くの間、二人でじっと滝を眺めながら座っていた。辺りには、水が滝壺に落ちていく音と、時折木の葉がすれる音がするだけだった。


先に声を出したのは幸姫だった。

「こたはさ」

小太郎は少しだけ顔を幸姫の方に向けた。

「もし…もしもだよ?こたの全く知らない世界に、気づいたら迷い込んじゃった、なんてことになったら…どうする?」

幸姫が聞くと、小太郎は少しだけ不思議そうに首を傾げた。
ちらりと見た小太郎の表情に、一瞬、戸惑いが見えた気がした。


…何、聞いてんだろ、私。


深いため息が出た。



そんなこと、急に聞かれたって困るよね。



小太郎の答えを待たずに、幸姫が先にまた言う。

「ごめん。変なこと聞いた。今のは忘れて」



そう言うと、また、視線を滝へと戻した。




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