あの音をもう1度


「大丈夫?奏ちゃん?」



「だ、大丈夫…で、す」



そんなたどたどしい答えだけで精一杯で私はイスに座り込んでしまった。






・・・どうして?



コンサートなんて初めてじゃないのに…どうしてこんなに体がすくむの?



よっぽど規模も心構えも復帰コンクールのときのほうが大きいはずなのに、

あれから何回もコンクールに出たのに、


暗黒のもやのような不安が私を追い続ける。






「奏ちゃん!僕がついているよ。君は大丈夫だ!」



様子がおかしい私をバルトニアさんは一生懸命手を握って励ましてくれるが、私にとっては遠くのように聞こえた。



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