BABY×DOLL
そんな言葉だけを投げかけて、遠藤さんは静かに病室から出ていった。



  【──中絶】



独り残された、あたしの頭の中で何度も繰り返される言葉…

今のあたしに、落ち着いて判断できるハズもない。

他人事なら善悪を判断できただろう。
…でも、産める?こんな裏切りかたをした彼の子供を産んで──愛せる?

他人事なら…
『子供に罪はない』と

『だから産むべき』だと言えただろう。

この子を産んだら…仕事は辞めなきゃいけないかもしれない。多分…続けられない。

収入もなくて
愛する事もできなくて

最低20年──正直育てる自信がない…

この子の未来を考えたら産むべきじゃないとも思えるの…生まれながらにして不幸な子供を作る──それも残酷だと。

──でも、それは多分言い訳だね。

あたし、こんな事で自分の人生を棒に振りたくないと…心のドコかで思ってるの。

なんて身勝手なんだろう?

まるで、この胎内に宿る命を'異物'のように感じていた…




「ブブブブ…ン」

──真夜中。
どこからともなく聞こえてきた音に目を開けた。

…あたしのバッグからだ…

どうやら携帯の電源をOffにしておかなかったらしい。
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