禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟
香蘭さんはまだ、部屋の奥を見つめています。桔梗さんが帰ってくるのを待っているのでしょう。ただ、ただ。

私はなぜかその横顔を見続けていることができなくて、店の入り口に目を向けてから、質問を続けました。

「あの、もう一個、いいですか」

「なんでしょう」

「桔梗さんから聞いてるんですけど……お化けに、おやつってあげられるんですか」

「はい」

相変わらず、店の中が暗いので、外は真っ白く路面が光って、眩しいくらいでした。

「それって……、お供えってことですか?」

「いいえ」

「〝いいえ〟?」

「手渡しにございますゆえ」

「手渡し、ですか……」

「はい」

安っぽいエンジン音が聞こえて、右から左に、スクーターが抜けていきました。路面が真っ白く光っているせいで、宙を浮いて滑っているように見えました。
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