禁煙する倭ノ宮桔梗と泣き出さない〝たたりもっけ〟
やれやれ、敵いません。彼女がたたりもっけにおやつをあげられることは、どうすれば納得できるのかさっぱりです。が、彼女のやっていることを無闇に注視の的にするのは無粋のようです。

証拠不十分なことは記事にしない。ということで、いいですよね。

「……終わったかいの?」

その時、戸が開いて桔梗さんが戻ってきました。胡乱気な表情と、右手のコップには濁った黄緑色の、少し泡立った液体。

「はい、たった今」

と、最低限の動作で体ごと振り返った香蘭さんが、微笑で答えます。

「ふむ」と頷く桔梗さん。また番台につきつつ、「よかったの」と。

それは私と香蘭さんちらに言ったのかわかりにくいものでしたが、どうやら……時間を与えられていたようですね。してもらったというより、してやられたような気分です。

少し、なぜか、悔しさが心の底辺に染み込んできて、私は彼に食ってかかりました。

「ではではでは、桔梗さんっ」

「うむ?」
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