黒紅花
「ああ、今の人はタクさんの奥さん
 
 ほらっ、バイク店のオーナー
 宅間さん」

「ああ……」

私ってば、何、ほっとしてるんだろう?

ひさぎとの別れを選び、住所も知らない
この場所に私は来ておいて、女性の影に
動揺したりして、今更だよね。

「チトセ、聞いてる?

 タクさんの店にバイクを売りに行ったら
 話の流れで、彼の家にしばらくの間
 厄介になることになったんだ」

「えっ、本当、よかった」

「ああ」

ひさぎの居場所が見つかって、よかった。

本当によかった。

私は、心からホッとした。

「バイクも思ったよりも高値で
 買ってもらえる」

なぎの恋人である、おじさんが
買ってくれた、ひさぎのバイク……

「もう、売っちゃったの?」

「ああ、持ってても何かと邪魔になる
 だけだから……
 
 タクさんは預かっておいてくれると
 言ってくれたけど俺は断った
 
 もう、俺がアイツに乗ることはない」
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