堕天使の銃声
そうこうしているうちに、総司令の待機するホテル前に到着した。
「どうぞ。」
野田たちを降ろした杉浦准尉に、総司令への連絡を指示すると、すぐに電話をかけ始めた。
しばらく待っていると、総司令から伝言を受けた杉浦准尉が、私たちに指示を出した。
「坂本様は、高崎中佐が医務室へ連れていくように、とのことです。
野田様と葛城様は、自分が待合室までお連れします。」
「分かりました。」
そう答えた私は、背中に坂本を背負い、医務室に向かった。
医務室へ向かう途中、坂本が目を覚ました。
「…ん………?」
「あ。
おはようございます、先生。
体調はいかがですか?」
傷の痛みのせいか、背中の上であまり動かない坂本に対して、あからさまな問い掛けをする。
すると先生は、
「…死なねェように急所を外して刺すたァ…
…甘く見られたモンだな、俺も。」
前を向いているから、先生の表情は見えない。
だがその言葉から、呆れているような、落ち込んでいるような、憐れんでいるような、悲しんでいるような… そんな気持ちが受け取れた。
「……もうすぐ医務室です。
応急処置しかしてないので、ちゃんとした治療を受けてください。」
「……………わかった。」
わかっていない、“わかった”だと思った。
だから、すぐにわかった。
(…目を離したら、脱走でもするつもりかもね…?)
(…でしょうね。)
凛も私も、同じ結論に至った。
でも私の心には、何となく、“違うモノ”が残っていた。