堕天使の銃声
「じゃあ、よろしくお願いします。」
医師に坂本を任せ、私は医務室を出た。
(…さぁ、どう出るのかしら?)
その途端に、凛が私に囁いた。
その言葉の意味は、もちろん理解していた。
だからこそ、私は医務室に戻ることはしなかった。
(きっと坂本先生は、この本部から逃げることはしない。
いくら過去に戦闘の経験がある坂本先生でも、ここの管理をしている人たちの目を掻い潜ることは不可能だ。
まして、この医務室は地下にある。
周辺に地下ダムやら排気口やら排水溝やら、脱走を試みることができる通路となるものは、ない。
医務室から脱走した坂本先生は、それらを一通り調べ終わった上で、この施設からの脱走は不可能と考えて、必ずあの場所に行く。)
(私たちは、そこでただ待っていればいいってわけね。)
(そういうこと。)
ここに至るまでの間で、先生方の思考回路は読めている。
連れてきたのにみすみす逃がすなんて真似、しない。