魅惑★ladyの作り方



「慧!
また結城ちゃん襲って!」

「…」


あの後、慧は海に投げ飛ばされ、今は椅子に座っている。
華楠はまたも腰が抜けたため、床で海に支えられて座っていた。



『慣れない…』

「俺も慣れるまで結構かかったからね。
慣れなくて良いんじゃない?」

「…」


やたらと華楠に触る海にどこかご立腹な慧。
華楠ははぁ、と溜め息を吐いて海に話し掛ける。



『今日も病院ですか?』

「ん?
あぁ、そうだよ。
よかったら結城ちゃんも来ない?
未来が喜ぶ。」

『あ、行きたいです。』


慧は喜ぶのはお前だろ、と心の中で悪態を吐きつつ仲の良い二人をじっと睨んでいた。



『…あ、そろそろ大丈夫です。』

「ん、どうぞ。」


海は華楠から離れスッと立ち上がり自然な動作で手を差し出す。
華楠もそれに自分の手を重ね、よろけつつ立ち上がった。



「じゃあな慧!
ドーナツ貰ってくから!」

『あっ、今日は有難うございました…!』


海は自分と華楠の鞄を片手で持ち、ドーナツの入った軽い箱を華楠に持たせ、余っている手で華楠の手を引っ張って家庭科室を後にした。



「………手、繋ぎやがった。」



慧はボソッと呟いたあと、でも俺は海より華楠の良い声聞いてる…。と密かに優越感に浸り、よしとした。
 
 

< 98 / 212 >

この作品をシェア

pagetop