声恋 〜せいれん〜
「よっし! またまたデメキンげっと!」
ギャラリーからまたまた歓声がわく。わたしと蓮也さんも人ごみにのまれて凛ちゃんの姿もよく見えない。
「…すごーい! 凛ちゃん、もうずっとやってますよ!」
金魚すくい、わたしと蓮也さんはすぐおわっちゃったけど、凛ちゃんはいっぱいとっててまわりに人が集まってきちゃった。
「あいつ…ほんとに金魚すくいうまいんだな。話には聞いてたけど見るのははじめてだ」
そういってくぴっと缶ビールをすする蓮也さん。わたしはガブッとイカのあしをかじる。
「むぐむぐ…って、あれ、蓮也さんは、凛ちゃんとお祭りきたことないんですか? …って、あ、そっか、別々…だったんですよね。えっ…と、十以上もはなれてたらいっしょに遊ぶってこともあんまりなかったですかね?」
「みてみて~、お兄様、凛こんなにとったよ~!!」
人ごみを押し分けて、凛ちゃんがこっちにやってきた。
「あ~っ、こら、陽菜、だめじゃないかお兄様にビールなんか! お兄様、ビールは太るから飲みすぎちゃダメですよ」
「ははっ、わかってるって。いいだろ、こういうときくらい」
「んもぉ~。一本だけですからね!」
そういって楽しげに笑いあう二人…この二人にも、いろいろ大変なことがあったんだろうな…。
ふと空を見上げると、真っ暗な夜空が屋台の照明できれいに明るく染め上げられていた。