声恋 〜せいれん〜
「あっ…チッ、なんだよ…おい、行こうぜ」
「あ、ああ、じゃ、じゃあ、またな!」
またな…ってあんた、凛ちゃんじゃなくて蓮也さんに言ってますけど。ああ、それにしても凛ちゃん、こんな大声で泣いちゃって…よしよし。
ぎゅううううって、凛ちゃんを抱きしめた。そしたら凛ちゃん、もっと大声でわあわあ泣き出した。よっぽどくやしかったんだねぇ…。
「よしよし、もう大丈夫、大丈夫だから。あいつらもう行ったから。もう怖くないよー。どんな目にあわされたか知らないけど、もう大丈夫だからね」
「…違う」
「えっ…?」
「怖くて、泣いてるんじゃない!」
ズビズビと鼻をすすりながら言う凛ちゃん。
「陽菜が親友だっていってくれらから、泣いてんだよ! お前のせいだ! バカーっ!」
そうしてまたわあ~っって泣き出した凛ちゃん。え…。そうだったんだ…。
ギュウッと強く抱きしめて頭をなでてあげたら、わたしの浴衣をにぎる凛ちゃんの手がさらに強くなった。
蓮也さんがにっこりと笑いかけてくれたけど、このときばかりは凛ちゃんの涙の方がうれしかったな。