声恋 〜せいれん〜
街の中心からちょっとはずれたところにそのお店はあった。
「かわいいお家…だけど、ここホントにお店なの…?」
しん…とした空気、古くさい匂いをまとう静けさに、ちょっと足がすくむ。
「ああ、まちがいない。入ればわかるさ」
そう言う蓮也さんを信じて、入り口の扉にそっと手をかける。
あれ…? 開かない。
「鍵…かかってるよ」
「ああ、それを鳴らさないと。一度にたくさんの人が入ってこれないようにしてるんだ」
そう言って呼び鈴を押した。
どこか遠くで、ベルが鳴る。
だったらはじめっから押してくれればいいのに…。
またすこし不安になる。