声恋 〜せいれん〜




ことり…ことり…。




足音もこの空気を乱さぬよう、ひかえめになる。




目の前のグラスをとる…ふれただけで割れそうだ…。




「一万二千円…」




わたしはそっと、そのグラスをおいた。




「これ…ぜんぶそうなの…?」




「フランスのものが多いらしい。だいたい5、60年以上前のものらしいな」




すごい… これ全部…わたしたち…いや、わたしのお父さん、おじいちゃんと同じくらい昔からいるんだ…。




でもなんか…怖くない…というか…子供みたい。みんな笑ってる。




ひとつひとつが、語りかけているみたい…なんだかずっと、耳がツーンとする。




声が…あふれてるんだ。




この子たちはまだ生きていて…。




呼吸をしている。




それに比べてわたしの…生きた時間って…みじかいなぁ。



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