声恋 〜せいれん〜
もう二度とは戻れない 戦いの真ん中で
陽射しは同じなのに あのころよりも黒く染まる銃口
曲調が変わり、蓮也とカイとヒロ、三本のギターとベースが同じような動きで叫びだす。
魂のこもった、蓮也の声。
順調に進んでいた少年の足下に、血まみれの兵士がたおれている。
とまどう少年の顔。銃口を向ける。お互いの顔が恐怖と苦痛でゆがむ。
蓮也の叫び。曲は歌のないソロに入る。
引き金は…引かれない。
混雑した電車の中で、イヤホンをつけた少年がゲーム画面から顔を上げる。
今度の少年の世界は白黒だった。
メンバーたちは無人の市街地におきざりにされる。曲だけが少年の世界に届いている。
色のない世界で、荒々しい音楽の中、少年は歩いていく。
人、人、人、不安と暴力に満ちた音楽が鳴り止まない。
男が少年にぶつかり倒れる。死にそうな兵士。少年は冷ややかに、視線を男に向ける。
ザリザリとしたギター音が世界を切りきざむ。