声恋 〜せいれん〜




「そう…ですね、いつも自分の演技のことばかりで、あんまり、まわりは、見えてなかったですね…はい」




正直に答えるしかなかった。自分でも感じていたことをこうしてハッキリ言ってもらえるだけでも、幸せだと思った。




「ま、この業界…っていっても、どこもそうだろうけど、人間関係大事だから。スタッフさんからなにから、みんなのおかげで作品できているということを、わすれないでね」




そういって彼女はよっこいせ、といって立ち上がった。「あー、腰いてー」と言いながらウーン、とのびをした。そこには何ら私的な感情は感じられなかった。




「蓮也もそれを気づかせたかったんじゃないかなぁ」




その言葉を聞くまでは。



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