声恋 〜せいれん〜
蓮也さんのバイクのあとに塔子さんのバイクがよりそうように続く。
二人の乗るバイクのテールランプが赤いリボンのようにゆれる。ぼんやりと見送っていたら、心の中にもやもやした黒いものが生まれて、それがわたしの心を完全に塗りつぶしていくのがわかった。
今わたしは、悲しいの? さびしいの? 怒ってるの? 泣きたい…の?
はじめて会った交差点…機内でのあの街の灯…お祭りでのあの表情…あの日の海岸の夕陽…そしてあの星空。あの体温…。
『陽菜…』
蓮也さんが、わたしを呼ぶ声。
「蓮也さん…」
応えのない言葉を、やはりつぶやいてしまう。わたしはどうしていいのかわからなくて、うつむいてそっと泣いた。