声恋 〜せいれん〜
「でも…でも好きっていったて、いまはわたしがいるじゃん!」
「うん、お兄様はもちろん陽菜のことも好きだよ。でも塔子さんのことは、ずーっと、わすれないで、心の一番深い部分で、しっかりと存在したままだったんだろうね」
「…そんなの…ずるいよ」
ぎゅ、っとシーツを強くつかんだ。ずるい…ずるいよ…。
「だからぁ、陽菜のことも好きだってば」
「…2年も離れてても…好きさはかわってないのかな…?」
「んー、凛、よくわかんないけど、それだけ特別な相手なんじゃないかな? お互いが。だってそんなに長いこと会えなかったら凛だったら新しい人さがすもん」
「…どこがいいんだろ…いや、わたしが悪いのかな…? わたしが蓮也さんを満たしてあげられなかったから、やっぱり塔子さんの方がいいやってなっちゃったんだよね…なんで…どこがいけなかったんだろ…」
いままでの思い出がフラッシュバックする。
はじめて会った交差点…機内でのあの街の灯…お祭りでのあの表情…あの日の海岸の夕陽…そしてあの星空。あの体温…。
『陽菜…』
蓮也さんがわたしを呼ぶ声が聞こえた。
わたしはもう、どうしていいのかわかんなくて、うつむいてポロポロと泣いてしまった。
「わかんない…わかんないよぉ…」
どうして…蓮也さん…
そんな無力なわたしの背中にそっと、ちいさな手がそえられたのがわかった。