声恋 〜せいれん〜




「ごめんね優一くん…あ、これ、おそくなったけど誕生日プレゼント…」




「あ…ありがとう。あ、ぼくも…クリスマスプレゼント…ちょとはやいけど、もう受験の追い込みだからなかなか会えないから…いろいろと忙しいから…あ、ほら、プレゼントのお返しだから、そんな、たいしたアレじゃないからさ、メールもしてないし…声優の練習もつきあってあげれてないし…」




「あ、うん、ありがと…ごめんね、勉強いそがしいのに気をつかわせちゃって…」




「いや…こっちこそ、よけいな気づかいだったかなって…ほら、桜木さんには、ちゃんと渡す人がいるからさ…」




「あ…いや…うん…」




あいまいに、うなづく。




観覧車が、ゆっくりと夜景を映す。




「…すごく、ひさしぶりだね。こうして二人ですごすの」




「…うん…受験勉強で忙しかったし…桜木さんは、蓮也とのデートで、忙しかったみたいだからね…」




「…うん…」




「…」




その蓮也さんは、なんだかずっと遠くの方にいってしまった。




あんなに近くにいたはずなのに…。




地上から離れた観覧車は、やがてかならず地上に戻る。




夢は、かならずさめる。




あれもまた、夢だったのだろうか。




…わたしの、声優になりたい、という想いも…。




優一くんを見る。今日の彼はとても静かだ。なんだか昔冗談をいいあっていた、あのころの感覚が思い出せないや…。



< 205 / 286 >

この作品をシェア

pagetop