声恋 〜せいれん〜
「ごめんね優一くん…あ、これ、おそくなったけど誕生日プレゼント…」
「あ…ありがとう。あ、ぼくも…クリスマスプレゼント…ちょとはやいけど、もう受験の追い込みだからなかなか会えないから…いろいろと忙しいから…あ、ほら、プレゼントのお返しだから、そんな、たいしたアレじゃないからさ、メールもしてないし…声優の練習もつきあってあげれてないし…」
「あ、うん、ありがと…ごめんね、勉強いそがしいのに気をつかわせちゃって…」
「いや…こっちこそ、よけいな気づかいだったかなって…ほら、桜木さんには、ちゃんと渡す人がいるからさ…」
「あ…いや…うん…」
あいまいに、うなづく。
観覧車が、ゆっくりと夜景を映す。
「…すごく、ひさしぶりだね。こうして二人ですごすの」
「…うん…受験勉強で忙しかったし…桜木さんは、蓮也とのデートで、忙しかったみたいだからね…」
「…うん…」
「…」
その蓮也さんは、なんだかずっと遠くの方にいってしまった。
あんなに近くにいたはずなのに…。
地上から離れた観覧車は、やがてかならず地上に戻る。
夢は、かならずさめる。
あれもまた、夢だったのだろうか。
…わたしの、声優になりたい、という想いも…。
優一くんを見る。今日の彼はとても静かだ。なんだか昔冗談をいいあっていた、あのころの感覚が思い出せないや…。