声恋 〜せいれん〜
「それはそいつが陽菜のことをすごく大事に思っているか、それとも別の男性を想って泣く姿を見せつけられて手出しできないでいるか、どっちかだね」
年が明けてた。最近一番話すのはアユ先輩だった。
春から同じ専門学校の先輩になるから学校のこともきけるし、きさくで何でも話せる。エリカともメール全然してないし…正直、ほかに話せる人がいない。
きっとわたしと先輩はちょうどいい感じで離れているから、話せるんだろうな。近すぎると、逆に話せなくなることもある。
「なぐさめてほしかったわけじゃないけど…ん…でも、やっぱりなぐさめて欲しかったのかな…優一くんの目の前で、泣いちゃうなんて自分でも思ってもみなかったから…」
「んー、だって、あんたが別の男を想って泣いてるってのはバレバレだからねぇ。そういう弱ってるときにつけこもうとするのが肉食、だまってオロオロするのが草食ってね」
「もー、先輩、優一くんはそんなんじゃないんですってばー。優一くん、もう他に好きな人がいるし…」
その「好き」という言葉が、わたしの心にトゲのようにささる。
「それに、わたしが傷ついてるのわかってて、そっとしといてくれたんですー」
「はいはい、そいつが紳士だってことは、わかりましたよ。で、あんたはどうなの? あんたはその優一ってやつのこと、好きなの?」
「んぇえ? …好きか嫌いかで言ったら…もちろん好きですよ」
「じゃあ答えは簡単だな、その、あんたをふったナゾの二枚目を忘れて、優一に告白しちゃいなYo!」
「え?! 告白?! ぷっは〜」
「な〜に笑ってんだよぅ」
「だって…んっふ、はぁ、だって…優一くんに告白だなんて…優一くん、わたしのこと、女としてなんてみてないですよ〜。ただの声優好きの友達、ていうか、師弟です、師匠と弟子の関係です」
あ〜、おかしい。おもしろいなあ、先輩。あんまりおかしくて、涙でてきた。