声恋 〜せいれん〜




もちろんあのころも必死にがんばってたし本気だったけど、そういう風にがんばっている人は世の中にはすっごくたくさんいるのがわかった。こうしていろんな人たちの才能にふれるたびに、“ああ、わたしってまだまだなんだ”って思う。そして自分に自信がなくなる。




優一くんが教えてくれたら…蓮也さんが、はげましてくれたら…って、何度も思った。わたしの苦しみを、聞いてもらうだけでもいい。




正直いちばん思うのは、“こんなとき、エリカがいたら”っていうことだ。ほかの子たちとうまくつきあえないのも、演技にうまく心をこめられないのも、エリカとのことが頭にあるからだった。




あのころ、わたしは自分のことだけで手一杯だった。エリカの心の声に、気づいてあげられなかった…ううん、気づこうとしなかった。




彼女が一番苦しんでいる時期に、何もしてやれなかった。その後悔がいまでもわたしを苦しめる…。




会いにいきたいと思っても、もう、けっこうおなかが大きくなってるだろうし、エリカはもう、わたしを許してくれないだろう。だからメールする勇気もおきない。




怖いんだ…拒絶されるのが…。




それに、わたしだってこの新しい環境に慣れるのにせいいっぱいだ。




学校が終わるとバイト。




たまたま見つけた小さな雑貨店で雇ってもらったが、あまりお客さんが来なくて、逆にヒマ疲れしてしまう。一人でいる時間が長いと、考えなくていいことまで考えてしまう。




その底のない思考の穴に、のまれてしまいそうになる。
< 224 / 286 >

この作品をシェア

pagetop