声恋 〜せいれん〜




「美容院、紹介してあげよっか、わたしの行ってるとこけっこういいよ。店長チョーイケメンだし」




「あはは…ありがとうございます」




「それにあんた、けっこうかわいい顔してるからちゃんとしたカッコしてあたしといっしょに歩いてもらえると、もっと男どもがよってきそうじゃん」




正直だなあ、ほんと。




「あー、でも、だったらほら、藤堂さんの方がいいんじゃない? あの人モデルだし、すっごい美人だし」




「あいつはダメー。演技ヘタだし、そもそも心がこもってない。カッコばっかつけてるじゃん? だからキラーイ」




ハハハ…ホント、気持ちいいくらいだわ。そうなのだ、この子とにかく演技が好きなのだ。台本で与えられた役、どんな変な役でもやろうとするし、すごく一生懸命にやる。最初藤堂さんがセリフをぜんぜんおぼえてこなかったとき、先生よりも怒ってたもん。あれからだな、この二人が仲悪くなったの。




まぁ、わたしがこの塚本さんに気に入られているようなのも、わたしが真面目に授業受けてるってことだからだと思う。




「あんたも、感情こめて読むのヘタだけどね」




「ぐ…ハッキリ言いすぎ! これでもわたしだって…昔はすっごいうまいって、ほめられてたんだから…」




優一くんに…蓮也さんに…。




「へー、誰に? なんでできなくなったの?」




「…それは…いろいろあったん、です…」



いろいろ…。思い出してうつむいたわたしの顔を、おかまいなしにのぞき込む塚本さん。




「まっ、そんな昔話、べつに聞きたくないからさぁ、とっとと昔のあんたにもどってよ。そしてわたしと、勝負しよ?」




ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべる。




あなた、ほんとうにアイドルですか…?



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