声恋 〜せいれん〜
「ずいぶんと楽しそうねぇ、桜木さん」
その声の冷気にあわててふりかえると、藤堂さんとその取り巻き連中が立っていた。
「そこ、あたしの場所なんだけど」
超冷ややかな目ですずを見る。
なにも聞こえなかったようにガン無視する、すず。
「その場所は千明さんの席って決まってるからどいてくれない?」
はりつめた空気にたえきれなくなったのか、取り巻きの一人が言う。
「えー? そんなのいつ決まったのぉ? すずしらな~い。それに、すずが先にいたんだから千明ちゃんは他の席で食べなよぉ。いっぱい空いてるよ?」
アイドルスマイルでこたえるすず。
「ちょっと、アンタ…」
身を乗り出そうとする取り巻きに対して、千明さんがスッと前に出て制する。
「…調子のってんじゃないわよ」
「え、すず調子になんてのってないよぉ。千明ちゃんどうしたの? なんだか怖い顔ー…」
「…」
「ねぇ千明ちゃん、…調子のってんのはアンタのほうでしょ」
小声で、しかしはっきりと言うすず。
(うーわー…修羅場だ…)