声恋 〜せいれん〜
「え?! 家族に会わせてくれる? すずの家族に?! あたしでいいの?!」
「声でけーよ、へんなファンに尾行されたらどうすんだっつうの」
しぃーっ、と指をたてて声をひそめるすず。いちいちポーズが大げさだ。いや、おもしろいんだけどね。
「ああ、あたしもあんまり腹を割って話せる友達いないんだよねー。この業界、見栄のはり合いか相手の陰口でできてるようなもんだからさ。ああ、ヤダヤダ」
はあーっ、と盛大なため息をつくすず。
「うん、いくよ! いくいく!」
「ん。うち…弟三人、妹一人いんだけど、最近家に帰ってなくて、ぜんぜん家族サービスできてないからさ…ほら、あんた弟いるって言ったでしょ、みんなで外にご飯食べにいこうよ」
「うん! いいね! そっかー、そりゃ弟さんたち、お姉ちゃんがいないとさびしいよね…お父さんやお母さんは?」
「あー、あいつらは、いい」
「…?」
そのときのすずの態度に、ちょっとおかしいなとはおもってたんだ。