声恋 〜せいれん〜
夏の夜のすずしさも気持ちよく、すずと二人で彼女の家に向かう。
見えてきたのは…。
ボロっとした平屋の家…。意外…正直、もっとお金持ちっぽい家かと思ってた。
家の明かりから、ギャアギャアと子どもたちの騒ぐ声が聞こえる。
「あ…、ゴメン、玄関で待ってて。すぐ連れてくるからさっ」
どちゃっと靴が散らかったした玄関で、彼女を待つ。大人の靴にまざって、小さな靴がいっぱいあった。
すぐ隣が居間らしくて、彼女と、彼女のお父さんと思われる人の声が聞こえてくる。ん…酔ってる?
「おう、すず、帰ってきたのか。ひさしぶりだな。家の世話もしねーで、あいかわらずチャラチャラしたカッコして遊び歩いてんのか」
「あんたこそ珍しいじゃん。こんな時間に家にいるなんて。しっかり酒は飲んでるようだけど」
「いいかげんアイドルなんてわけわかんねー職についてねーで、さっさと定職につけって何べん言わせんだ」
「だれがこの家の金払ってると思ってんの!? あんたの指図は受けないからね! …あの人は? またパチンコ?」
「…」
「…拓也たちつれて、外でご飯食べてくるから」
「まだ話は終わってねぇ! いいかげん家に帰ってこい!」
「あんたには関係ないでしょ!」
…周りがみんな、自分のやりたいことを応援してくれる人たちばかりではない、ということなんだよね…。