声恋 〜せいれん〜
「ツアー終わって顔出したらいきなり知ってる顔があるんだもん、びっくりしちゃったよ。あ、はいこれ、店長とみんなにお土産だよ!」
ノンキに言う光紀さんに、ブルブルと震えていたすずがいよいよ本性をあらわす。
「…いきなりいなくなっといて…お土産…だとう? どれだけ…どれだけ人が心配したと思ってんだーっ!! このボケナスーっ!!」
ボケナスって…あーあ、とうとうこわれちゃったな…カウンターから飛び出してグーでむかっていくすず。
「あ…えっ…いてっ、いててて…すごい力だな…ゴメン…でも、すずちゃんがアイドルになって人気者になっていくから、ぼくもがんばらなきゃって、いつも、すずちゃんに、見合った男になろうって…いてっ…」
「…そんなの関係ねぇ…」
「えっ…?」
「そんなの関係ねぇ! アイドルでも、ミュージシャンでも、そんなの関係ない!! ただあんたが大好きなんだ、バカヤローっ!!」
深夜のコンビニに愛の告白が鳴り響いた。
ドンッ、と光紀さんをたたいていたすずの手が止まる。
「…っ…あいた…あいたかったあ…!」
「…うん…ただいま」
すずの顔をのぞきこむように笑顔を向けながら、やさしく、いとおしそうに、彼女の頭をなでる光紀さん。
「…おっ、おかえりなさいー…」
顔を涙でぐしゃぐしゃにして笑うすず。そこにはアイドルじゃないふつうの女の子の笑顔があった。
よかった…よかったね、すず…。