声恋 〜せいれん〜
「いってーーっ!!! なんだこれ?! おもいっきり足ぶつけたーっ」
甘い空気を切りさいて、優一くんが叫ぶ。
「あ、これ? これ筋トレ用のベンチ。背筋腹筋を鍛えるんだ」
「なんでこんなものがこんなところに…?」
「あれ、前言ってなかったっけ? わたし中学ずっと高跳びやってたんだ。もうやってないけど、でもトレーニングはやってるの。腹筋割れてるよ。見せてあげよっか?」
ほら、とワンピースのすそを持ち上げてみた。
「う、うわっ、いい、いいよ、いいから!」
優一くんてば、すっごいあわててる。
「へへ~、冗談だよ冗談~」
そういいながらわたしは照明をもとの明るさにもどした。部屋の中の雰囲気も一転して明るくなる。
なんだかまだ、わたしたちにはこっちの方が楽しいし、似合ってる気がした。
「それで桜木さん、そんな彫刻みたいに足がきれいなんだね」
「えー、優一くんってばやらし~。人の足を見てへんな想像しちゃってー」
「…変な想像はしてないけどね」