声恋 〜せいれん〜




「観覧車で正面にすわったら…まず脚を見るよな」




「ええっ! 脚!? そうなの?!」




「うん、だって正面からゆっくり相手を見る機会ってあんまりないし、あってもだいたいテーブル越しだから、下半身って見えないじゃん。だから脚、よく見るかも」




あわててわたし、バッて自分の脚、確認しちゃった。




「いや…そんなね、歩きながらジロジロ見ないよ。それに桜木さんの脚、鍛えすぎてて“むっちり”というより“ほそくてがっちり”だもんね」




「ぶー。なにそれひどーい」




「あと横にすわったら、やっぱり横顔が堪能できるのが、いいよね。耳元とかうなじとか、ふだんなかなか見れないところも間近でじっくり、見られるもんね」




「えーっ、そんなとこ見られるの~!? なんか恥ずかしぃしー」




「こっそりとね。景色を見るふりをして」




「あ、じゃあこっちも見ちゃう! 景色を見るフリして、でもチラチラ見ちゃうからバレるんだよね! で、蓮也さんに“何見てんだよ”なんて言われちゃって…もう~、きゃーっ!」




「あー…はいはい。桜木さんそういう妄想力だけは一人前だね」



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