彼と私と隣の彼
「ね?名前なんて言うの?」
少し前を歩いていた先輩は、一度あたしのほうを振り返ってそう尋ねた。
ここから見る角度もまたかっこいい…
「あ、中谷詩乃です…。」
「中谷さんね。おっけ。」
…中谷さん。
今までなんてことのないはずだった自分の名前が、なんだか急にとても愛しくなった。
それもこれも全部先輩のおかげ。
「これで3回目だね?」
またクスクス笑う先輩。
「どうせ方向音痴ですもん。」
あたしはどうせ迷子ですよー。
なんて言えば
「あはは、別に良いじゃん?その度に俺が見つけちゃってるんだね。なんか運命っぽい。」
「え…。」
未だに少し笑ってる先輩だけど、今の言葉を聞いたあたしにそんな余裕なんかない。
好きな人に運命なんて言われて、軽く流せるほどあたしも大人じゃないんだ。
運命なんて…
いつもは軽々しく口にしてるのに、今だけはすごく重みがあって。
自分の都合の良いように解釈してしまいそうになる。
自惚れるな、あたし。
「でもそっかー。実行委員なんだね。」
「はい、半強制ですけど…」
「大抵そうだろうね。でもこれで会う機会も増えたし、よろしくな。」
「あ、こちらこそよろしくお願いします。」
頭一個分以上高い先輩は、やっぱりとてもかっこよくて、生徒会長なだけあって、何も加工のされていない髪型も気崩さない制服も…
先輩だからかっこいい。
ただの真面目、だけじゃない。
見てすぐわかる。
オーラでわかる。
何かが人を引き寄せているんだ。
だからこうして生徒会長にもなれている。
きっとそういうところにあたしは惹かれたんだと思う。
どこが?何が?じゃない。
あたしは先輩自身に惹かれたの。