彼と私と隣の彼
でも探して来いなんて言われたって、こんな広い校舎の中で春人がどこにいるかなんてわかるわけないじゃん…
ただでさえ方向音痴なあたしに?
そんなことさせちゃって?
もう、知らないんだからね。
物々と独り言を言ってたあたしは、気づかないうちにまた知らないところへ来てしまったみたいだ。
「あ…ははは。」
…いや、笑えない。
さすがにこの展開にはあたしも飽き飽きだ。
見慣れない壁に見慣れない外の風景。
…また?
ふと窓の外に目をやれば、ちょうど校舎の影になる部分が見える。
あれ、あそこって…
確か体育館の裏?かな?
…え?
「春人…?」
不意に見えた人影。
遠くからでも目立つ、人工的につくられた茶色い髪に、着崩された制服。
遠くからでも目立つよ…
バカ春人。
そんなとこで何やってんだか。
あたしは窓を開けて思いっきり叫んでやろうと…
ばか春人って。
サボんなあって。
思いっきり叫んで、春人がいつものように調子良く
詩乃ちゃーん
って笑顔で叫び返してくれる。
そう思った。
そうだとしか思わなかった。
なのに…
どうしてだろう…
春人の体の影に隠れて見えたのは少し小さめの女の子。
そしてその瞬間…
春人の首に回された白くて細い腕。
少し屈んだ春人。
…何をしてるの?
春人…
何、してるの?