真実の奥に。
ふと八木に目をやった。


彼は俯いて、まだ怒りで震えている右手の拳をもう一方の手の平で包んでいた。


あたしは1歩近づいて彼に言った。
「殴るならあたしも殴って。」


当然の結論だった。


「風香以外にあたしに嫌がらせをした人がいるっていうのは本当みたいなの。」


八木の手の震えがピタリと止んだ。
あたしは構わず言葉を続けた。


「風香は八木に復讐のつもりであたしに嫌がらせしてきたけど、もう一人はそうじゃない。あたしに直接恨みがあって、遠回しに、八木に、八木に………。」


それ以上は言えなかった。


「八木に嫌がらせ」と言うにはあまりにも残酷過ぎる事件だった。



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