婚約者☆未満
すると、制服姿の女子従業員が一人、キャビネットを確認しながら書類に何か書き込んでいた。
「安永(ヤスナガ)さん」
貝塚さんが声をかけると、その人はゆっくりこっちを向いた。
背が低くぽっちゃり型で20代前半くらい。
目をしばしばさせてこっちを見る様子は、おびえた小動物みたいだった。
「こちら、社長のお嬢様で礼奈さん。
今週いっぱいここの整理を手伝って下さるそうだから、手順を説明して協力してやってくれるかい?」
貝塚さんがそう言うと、安永さんはあたしの方を見た。