婚約者☆未満

すると、制服姿の女子従業員が一人、キャビネットを確認しながら書類に何か書き込んでいた。


「安永(ヤスナガ)さん」


貝塚さんが声をかけると、その人はゆっくりこっちを向いた。


背が低くぽっちゃり型で20代前半くらい。


目をしばしばさせてこっちを見る様子は、おびえた小動物みたいだった。


「こちら、社長のお嬢様で礼奈さん。
今週いっぱいここの整理を手伝って下さるそうだから、手順を説明して協力してやってくれるかい?」


貝塚さんがそう言うと、安永さんはあたしの方を見た。


< 82 / 270 >

この作品をシェア

pagetop