君に愛の唄を
「離しなさい」
サラリーマンは男を睨みつけ、それだけを言い放った。
言葉にはあまり迫力はなかったけれど、サラリーマンは確かに私を助けようとしてくれている。
「嫌だね。なに意気がってんの?オッ…」
━━ドカッ…ボコッ…
サラリーマンは男の顔を一発殴った後、男の腹を蹴った。
その殴られた男は私の手を離して地べたに苦しそうに倒れ込んだ。
その瞬間にサラリーマンは私を引っ張り、自分の後ろに私を隠した。
私は一瞬の出来事についていけずにいたけど・・・
サラリーマンは私の手を"ギュッ"と握っていてくれた。
"大丈夫だよ…"
とりあえず私はそれに安心した。
「…チッ…行くぞ!」
男達はサラリーマンに勝てない事を悟ったのか、男達は一斉に逃げて行った。
男達の姿が見えなくなったのと同時に、私は安心して力が抜け、そのまま地べたに座り込んでしまった。
……力が入らない。
サラリーマンが握ってない方の手が、まだ震えている。
サラリーマンが握ってくれてる手は不思議と震えていなかった。