街で君の唄を聞いた
「…レザ」
「ん?何や?」
「…ソファー独り占めしてんじゃねぇよ」
「早い者勝ちや」
レザは一人でソファーを独占している。
そのため、ヴィーノ以外はレザに向けて目を光らせている。
座りたいがために。
あんたは払うだけじゃないか。
あたしの為に此処に来たんじゃあぁぁ!!
「ま、コイツはほっといて、レザの分も茶でも飲んでおくか」
「そうね。独占してるってことは、紅茶も要らないって事ですものね。嗚呼、ナレシヌ様が煎れて下さったのに…。とても美味しい紅茶ですのに」
「わぁホントだ!これスッゴく美味い!」
「ちょ…」
煽る、煽る。
煽りまくってレザをソファーから退かすの会。(暗黙の了解)
「ナレシヌ様の煎れられる紅茶は世界一ですのに…。特にこの紅茶何で前よりか腕が上がっていますわ」
「そうやなぁ。こんな美味い茶を飲めないなんて…残念すぎるわー」
「きっとみんなの為だったからもっと美味しいんだろうねー。生きててよかったー」
「…ぅ」
お、何だか退きそうだ。
煽り作戦成功?
ははは。面白い。
「あ、そうですわ。いろんなことがあって忘れていたのですが…。これを」
「?何これ?」
「これから魔法を使えないと不便だと思いますので、軽い魔導書をお渡ししますわ。私にはもう必要御座いませんので」
渡されたのは、黒色の本。
ただの本じゃないって事を示すのは、表紙。
既に少し、光を帯びている。