街で君の唄を聞いた
「俺泣かれると弱いねん」
「…グズッ」
「話せるようになったら、いつでもええから、話してな」
何で、こう、みんな優しいんだろ。
訳の分からん奴が突然来てさ。
それでも笑顔だったし。
何でもしてくれるし。
「…正直」
「ん?」
「正直夢だって思ってて。でも寝て覚めても夢の中で」
「…うん」
「いつも周りにいた人達が居なくて、独りになった気分で」
「うん」
「何だかんだ優しかった兄貴達がいない。通ってた学校に行くとバカみたいに一緒に笑ってる友達がいない。この世界に来た途端に、持っていたものは全て失った。何を持っていたのかすら解らなくなった」
まだ溢れる涙は、留まる、ということを知らないのだろうか。
服に涙の痕跡がある。
コルクがポンポンって頭をしたり、撫でてくれるから、余計に留まらないっていうのもあるんだけど。
この感覚を、あたしはどこかで知っている気がする。
何時の間にか、意識は手放していた。