花の魔女
皆が寝静まり、更に暗くなった廊下をドニは進んだ。
向かうは、この大きな館の最上階。
思えば、前から不思議に思っていた。
ドニがラディアンの世話係につけられる前、仲間たちとともに館内を掃除するのがドニの仕事だった。
けれど、館内で掃除に入るのも許さない、決して扉を開けられることのない部屋がある。
仲間たちはそこに化け物が棲んでいるのだとか、言うことを聞かなかったり仕事をうまくやれなかったりした使用人を閉じ込めているのだとか、
いろいろと噂していた。
ドニもその部屋を不気味に思い、決して開けなかったし、極力近づきもしなかった。
そしてその部屋は、今まさにドニが目指している場所。
最上階の、一番隅にある、錆びたドアノブのついた部屋。
こんなことがなければドニは絶対にその部屋に近づくことはなかったし、扉を開けようとも思わなかっただろう。
部屋の前につき、扉をじっと凝視した。
ドニは確信していた。
ここに、あれがいる。
意を決して扉に手を伸ばした、そのとき。