花の魔女
どうやら、ラディアンにかけられた呪いは完全に解けたわけではないらしかった。
たびたび呪いに引きずりこまれ、ドニが急いで触れればもとに戻るのだが、朝でも夜でも関係なく襲ってきて、眠っているときにうなされていることもあった。
ラディアンはドニに心配かけまいと何でもないように振る舞うのだが、顔色が悪いのに無理矢理笑顔をつくる様子はドニの胸を痛めるだけだった。
日に日に弱っていくラディアンの姿に、早くどうにかしなければ、とドニは焦った。
このままでは、ラディアンが呪いに飲み込まれてしまうのが目に見えて明らかである。
ドニは疲れやすくなったラディアンが眠ってしまうと、こっそりと懐に隠していた本を取り出し、あるページを開いた。
―――行動しよう、今夜だ。
そしてそのページに花瓶に生けてあった薔薇の花びらを一枚取って挟み、また懐にしまうとラディアンを起こさないように静かに部屋を出て行った。