花の魔女
「……っ」
ナーベルは力を込めて胸にあてていた手を力なく落とした。
女はラディアンから離れ、にやりと笑った。
そしてナーベルを細くて美しい指で指し示す。
「ラディアン、あの女を殺してちょうだい」
とんでもない言葉が聞こえた気がして、ナーベルは目を見開いた。
ラディアンは頷き、ナーベルを見据える。
そしてためらいもなく腰の剣を引き抜いたのだ。
ナーベルは茫然としてその様子を眺めていた。
どうしてラディアンは、そんな物騒なものを私に向けているのかしら……
肩の傷が疼く。
ラディアンが剣の切っ先をまっすぐにナーベルに向けてきりかかってきても、ナーベルは何の反応もできなかった。
ラディアンの攻撃に反応した薔薇の粒子がかろうじて剣を弾き返し、ナーベルを守った。
しかしその衝撃で、力を保つ精神力も失ってしまったナーベルは、その粒子を消してしまった。